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アフターレポート

2016年2月17日(水)、株式会社セールスフォース・ドットコムと株式会社セミナーインフォの主催により、保険業界の関係者を対象に東京都千代田区のJPタワー ホール&カンファレンスでEXECUTIVE FORUMが開かれた。

「保険業界における顧客エンゲージメントの強化と成長戦略〜つながる顧客体験を創出するには?〜」と題されたこのフォーラム、消費者行動設計の重要性についてニッセイ基礎研究所の井上智紀氏により講演が行われたほか、従来のコンタクトセンターを顧客一人ひとりと長期的な関係性を実現するための「カスタマーエンゲージメントセンター」へ変革するためのポイントについて、具体的なデモンストレーションを交えた考察が行われた。

オープニング挨拶

 株式会社セールスフォース・ドットコム 専務執行役員 エンタープライズ営業担当 山賀 裕二 氏
フォーラムの始まりに際して、株式会社セールスフォース・ドットコム 専務執行役員 エンタープライズ営業担当 山賀裕二氏が挨拶に立った。

最初に自社について紹介。CRM(顧客関係管理)アプリケーションの分野では国内トップシェアを誇り、5年連続で米国のForbes誌が選ぶ「世界で最も革新的な企業」の第1位に選ばれていることを述べた。

次に、同社の特徴は、営業支援からマーケティング、コールセンターまで連携を図って一元管理できるカスタマー・サクセス・プラットフォームを提供していることであると説明。

今後、ITの進化によりあらゆるヒト、モノ、コトがネットワークにつながるようになり、顧客との接点が劇的に変わって接点の選択肢が広がる中で、顧客一人ひとりの状況に応じてOne to oneでカスタマーエンゲージメントを高めることが重要であると述べた。
【特別講演】

カスタマージャーニーの多様性が迫る
顧客接点の最適化

 株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部 准主任研究員 井上 智紀 氏
オープニング挨拶の後、「カスタマージャーニーの多様性が迫る顧客接点の最適化」と題して、株式会社ニッセイ基礎研究所生活研究部准主任研究員 井上智紀氏による特別講演が行われた。

井上氏は、まず消費者の「保険」との接点について、ニッセイ基礎研究所の調査データをもとに説明。20〜30代は日常生活において「保険」との接点がないこと、30〜50代は何らかの検討行動を主体的に取っていることを示し、パンフレットが検討時の最大の情報源であり、第三分野商品では比較サイトや保険会社のサイトを利用していると説明。

加入後は、営業や代理店による連絡・訪問やDM以外はほとんど接点がなく、サービスや情報提供を受けていないことに改善の余地があると述べた。

次に、コミュニケーションの効果について、商品種類別では貯蓄、個人年金において第三分野や死亡保障に比べて満足度が高く、乗合型店舗や独立系FPからの加入者では「推奨したい」意向が5割以上と高いことを紹介した。また、加入後に接触があるほうが、満足度・推奨意向が高く、満足度の低下は緩やかになることを示した。

最後に、カスタマージャーニーの多様化への対応について説明。消費者コミュニケーションの可能性として、オウンドメディアをどのように効率的に活用するか検討が必須であり、人的チャネルへの導線設計としても活用の可能性がある述べた。また、定期訪問や新商品の案内はないよりマシではあるが、役立つ情報は何か、もっと消費者に寄り添って考える必要があることを指摘した。

コンタクトセンターから
カスタマーエンゲージメントセンターへ
〜保険業界におけるコンタクトセンターの変革〜

 株式会社セールスフォース・ドットコム ストラテジック イノベーション エグゼクティブ マネージャー
 本間 茂樹 氏
特別講演に続いて、「コンタクトセンターからカスタマーエンゲージメントセンターへ 〜保険業界におけるコンタクトセンターの変革〜」と題して、株式会社セールスフォース・ドットコム ストラテジック イノベーション エグゼクティブ マネージャー 本間茂樹氏による講演が行われた。

本間氏は、今後は顧客一人ひとりの属性に沿ったエンゲージメント強化により、ロイヤリティを向上させていくことが市場開拓に必要だと指摘。顧客ライフサイクル(カスタマージャーニー)を通じたEffortless Experience(エフォートレス・エクスペリエンス=努力を要しない体験)が重要になることを説明。

Amazon、Apple、googleといった大手企業はもちろん、Effortless ExperienceをベースにCES (Customer Effort Score:顧客努力指標)を追求することで、保険業界でも各社自らが変革をリードできる可能性があると述べた。

次に、「カスタマーエンゲージメントセンター」に変革するための4つの施策を紹介。「エフォートレス・エクスペリエンス」「カスタマーエクスペリエンス」「エージェントエンパワー」「パフォーマンスドライブ」によりソリューションを提供していくという同センターのコンセプトを説明。カスタマーサービスのすべての状況を網羅した一つのエンゲージメント・システムにより、ワン・プレイスで一人ひとりの顧客の状況やニーズを理解して的確に対応できることを説明した。

保険業界におけるカスタマーエンゲージメント
センター・デモンストレーション

 株式会社セールスフォース・ドットコム リード・ソリューション・エンジニア 水越 将巳 氏
続いて、「保険業界におけるカスタマーエンゲージメントセンター・デモンストレーション」と題して、株式会社セールスフォース・ドットコム リード・ソリューション・エンジニア 水越将巳氏がデモンストレーションを実施した。

水越氏は、SFクラウド保険という架空の会社が、「カスタマーエンゲージメントセンター」によりどのように顧客の課題を解決していくか、4つのシーンでデモンストレーションした。

損害保険のCMを見て興味を持った人物がHPで個人情報を入力し次第、スマホにメールが届き、公式アプリのダウンロードを勧められ、ダウンロード。以降事故時の迅速な対応や希望サービスの詳細情報の提供等、ビデオチャット等様々なチャネルをうまく活用し、コミュニケーションが可能なことをを具体的に紹介した。

「シーン2」では、Tさんが友人のクルマでサーフィン旅行を計画。HPで同社のワンタイム保険を調べるが、求めていた情報が見つからずHPから離脱。するとチャットに誘導されてオペレーターとやりとり。Tさんは納得して契約する。

「シーン3」では、Tさんが旅行先で友人の車の側面をこすってしまう。Tさんはスマホのアプリを立ち上げ、トラブルボタンを押すと、ビデオチャットでオペレーターがコンタクト。対応方法がわかって安心する。

「シーン4」では、TwitterでTさんがこの体験をつぶやき、「家族が同乗していたら、どうなるのかな」とつぶやく。するとキーワードをモニタリングしていたSFクラウド保険が問い合わせとして受け入れ、「安心してください、保障されます」とすぐにフォローする。このように、TさんとSFクラウド保険がさまざまなチャネルをうまくつかって、コミュニケーションできることを具体的に紹介した。

顧客エンゲージメント 先進事例のご紹介

 株式会社セールスフォース・ドットコム 金融業界担当 ディレクター 鈴木 裕子 氏
最後に、株式会社セールスフォース・ドットコム 金融業界担当ディレクター 鈴木裕子 氏が、「顧客エンゲージメント 先進事例のご紹介」と題して報告した。

鈴木氏は、まず世界で1万5000を超える金融グループや金融機関がセールスフォース・ドットコムを活用していると説明。その中から、最初に革新的な旅行保険サービスを提供しているバークシャーハサウェイ・トラベルプロテクションを紹介した。

同社では、顧客が6つの情報を入力するだけで見積を取り、疑問はチャット形式で解決。タブレット上でサインして契約できる。旅行中に手荷物紛失などのトラブルがあれば、モバイルで保険金請求ができ、振り込まれた保険金で必要なものを購入することも可能だ。

ユニークなのは、トラブルを先読みするところだ。フライト状況をモニタリングしており出発が遅れた場合、代わりのフライトの再予約を支援。保険金の支払いもリアルタイムで知らせることで、イライラを軽減している。

次に鈴木氏は、大手保険会社AXAが、セールスフォース・プラットフォーム上に開発したiPadアプリで営業担当者の生産性を400%向上した事例を紹介。AXAではそれまで顧客訪問に荷物5kg、ラップトップ起動に5分、契約に5ページの書類が必要だったが、新しいiPadアプリにより、1ポンドの荷物でiPadの起動に1秒、1度の訪問で契約を完了させるという「1のルール」を作り上げた。同社幹部のインタビュービデオも流され、高い導入効果を得ていることが紹介された。
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